今や生活に欠かせなくなった文章生成AI。
その中でも一際目立つサービスとして知られているのがChatGPTです。
しかし、実際のところChatGPTがそもそも何なのかわからない方もいるでしょう。
この記事ではChatGPTの概要や歴史、具体的にどんなことができるのかについて解説していきます!
ChatGPTとは?基礎知識を押さえよう
まずはChatGPTの基礎知識を押さえていきましょう。
ここではChatGPTの概要と役割や「GPT」とはなんの略なのかについて解説します。
ChatGPTの概要と役割
ChatGPTは、OpenAIによって開発された高度な自然言語処理モデルで、人間のような会話を生成できるAI(人工知能)です。
「ChatGPT」という名前は、「Chat(チャット)」と「GPT(Generative Pre-trained Transformer)」の2つの部分から成り立っています。
もともとはGPTというものだけがあり、これはプログラミングスキルなどがないと利用することができませんでした。
それをチャット形式で誰でも使えるようにしたものがChatGPTです。
GPTは、テキストデータを大量に学習することで、人間のような自然な言語のやり取りを再現する能力を持っています。
「GPT」って何の略?
普段何気なく使っているChatGPTというワードですが、「GPT」とはなにか気になりませんか?
「GPT」は「Generative Pre-trained Transformer」の略なのですが、これではよくわからないと思います。
しかし以下のように分解して理解することができます。
Generative(生成)
Generativeは生成という意味があります。
AIのモデルが新しいテキストを生成できることを指します。
これは、入力された文章や会話の文脈に基づいて、関連性の高い応答や文章を作り出す能力のことです。
Pre-trained(事前学習済み)
Pre-trainedには事前学習済みという意味があります。
ChatGPTは膨大なテキストデータを使って事前に学習されています。
これにより、特定のタスク(例えば質問応答や文章生成など)に適応しやすくなっています。
Transformer(トランスフォーマー)
Transformerはそのままですが、トランスフォーマーという意味ですが、これは単に「変換させる」という意味だけではありません。
人間の言語をコンピュータが理解するためのモデルとしてTransformerという仕組みがあり、これを指しています。
Transformerは文脈を深く理解して適切な出力を生成するための鍵となる技術です。
ChatGPTの歴史:誕生から現在まで
続いてChatGPTの歴史について、誕生したときから現在までかんたんに解説していきます。
ChatGPTの開発背景
まずはChatGPTの開発背景から見ていきましょう。
もともとAIの開発は実は1980年代から行われていました。
このときのAIはルールベースと呼ばれる仕組みが主流でした。
ルールベースとは、あらかじめ決められた規則に従って動作するシステムのことです。
例えば、信号機は「赤は止まれ、青は進め」というルールに従って交通を制御しています。
現在ではAIと考えられないような仕組みですが、当時はこれが主流でした。
その後、2017年にChatGPTの言語理解の部分に当たるTransformerと呼ばれる仕組みが誕生します。
これにより、人間の言語をコンピュータがより深く理解できるようになります。
このTransformerの登場により、人間の言語を理解して処理を行うAIの開発が積極的に行われるようになりました。
GPT-1からGPT-4oまでの歴史
この記事を執筆している2024年6月11日時点ではChatGPTではGPT-4やGPT-4oが利用できるようになっています。
しかし、実はGPT-1からGPT-4oまで6世代も存在することはご存知でしたでしょうか。
ここではGPT-1からGPT-4oまでの歴史について解説します。
GPT-1:2018年に誕生
OpenAIが初めて発表したGPTのモデルがGPT-1です。
GPT-1は2018年に誕生したのですが、このときのGPTでは文章がどれくらい類似しているのかを判断できるものでした。
パラメータ数は1億1700万でした。
GPT-2:2019年に発表
2世代目となるGPT-2は2019年2月に発表されました。
GPT-2では文章の生成などが可能になり、多くの人が知っているChatGPTに近くなってきます。
しかし、GPT-2は長い文章を生成した場合に意味のない文章を生成したり、同じ単語を繰り返すということが起きるバージョンでした。
その一方でこれまでのモデルと比べると比較的高性能であったことから、発表時点ではソースコードは非公開となりました。
その後同年11月に完全版が公開されています。
パラメータ数は15億と、GPT-1の1.17億と比べると10倍以上になりました。
GPT-3:2020年に発表
3代目となるGPT-3は2020年に発表されました。
GPT-3ではより多くのデータが用いられて機械学習が行われたことにより、精度が大幅に向上しました。
パラメータ数は1750億と、GPT-2の15億から100倍以上に増えました。
GPT-3.5:2022年に発表
4代目となるのはGPT-4ではなく、GPT-3.5でした。
GPT-3.5は初めてChatGPTとしてリリースされた際に使用されたモデルです。
実はここまでのモデルの段階ではまだChatGPTは存在しませんでした。
つまり、ChatGPTはGPT-3.5から始まっているのです。
GPT-3.5の一番の特徴はRLHFと呼ばれる技術が用いられている点です。
RLHFとは人間がフィードバックを行うことで、より精度の高い回答が行われるようになっています。
GPT-3.5についてはパラメータ数は非公開となっています。
GPT-4:2023年に発表
5代目となるのが2023年3月に発表されたGPT-4です。
GPT-4はChatGPTでは有料会員であるChatGPT Plusに加入している人でないと利用できないモデルです。
GPT-4はこれまでもGPTモデルと比べてより多くの知識と問題解決能力を有しています。
これにより、難しい問題に関してもこれまで以上に正確な回答が行われるようになりました。
また、この数カ月後に発表されたGPT-4Vではマルチモーダルにも対応しています。
マルチモーダルとは画像やPDFデータなどを用いて回答をリクエストできる機能です。
これまではテキストのみで情報の提供を行わなければなりませんでしたが、マルチモーダルに対応したことにより、テキストと合わせて画像やPDFも添付できます。
これにより、より正確な回答が得られるようになりました。
GPT-4のパラメータ数も非公開となっています。
GPT-4o:2024年に発表
そして現時点で最新のモデルなのが6代目であるGPT-4oです。
GPT-4oは2024年5月に発表されました。
GPT-4oの特徴は応答速度が速くなったという点です。
前のモデルよりも速くなったことで、人間と会話をするかのように返答を得ることができます。
また、アプリなどに組み込む際に必要となるAPIのコストが安くなりました。
これにより、これまでコストの都合でGPTを組み込めなかったアプリにもGPTが用いられるようになりました。
また、ChatGPTにおいては無料ユーザーでも使えるようになった点も特徴の1つです。
1つ前のモデルであるGPT-4を使うためにはChatGPT Plusという有料会員になる必要がありました。
しかし、GPT-4oでは無料会員でもマルチモーダルを用いた回答をリクエストすることが可能になりました。
ChatGPT、何ができる?
では、ChatGPTは何ができるのでしょうか。
ChatGPTでできることは日々増えており、ChatGPTにアプリを追加できる機能「GPTs」も含めると一生かけても書ききれないほどできることがあります。
その中でも有用性の高い使用例について見ていきましょう。
ChatGPTを使うことで、以下のようなことが可能になります。
これらはあくまで一例であり、これ以外にも発想次第で無限の可能性があります。
1. 情報提供
1つ目は情報提供です。
これは非常にイメージがしやすいと思いますが、何かわからないことがあった際にChatGPTに尋ねることで情報を提供してくれます。
Googleなどの検索エンジンとの違いは文章で尋ねることができる点です。
検索エンジンの場合は、単語をスペースで区切って検索する必要があります。
しかし、ChatGPTの場合は文章で質問することができるため、比較的正確な回答を得ることができます。
また、質問を行う際に補足事項を書くことでより正確な回答を得られます。
さらに、「表形式で教えて」や「箇条書きで簡潔に教えて」などと付け加えることで、よりわかりやすい回答にすることもできます。
なお、間違った内容を答えることがあるため注意が必要です。
特に計算や歴史(〇〇年)などの数字系や、最新の情報は苦手な傾向があるため、注意が必要です。
2. 文章の要約
2つ目は文章の要約です。
例えば長い論文やニュース記事などをChatGPTにコピペし、「この文章を要約して」のように伝えることで、内容を要約してくれます。
最近ではURLの読み込みに対応しています。
つまり、WebページであればURLをコピペして「このサイトの文章を要約して」と伝えることで、文章をコピペしなくても勝手にURLにアクセスして要約してくれます。
さらに、マルチモーダルに対応したGPT-4oなどではPDFファイルを添付して同様に「このファイルの内容を要約して」と伝えることで要約してもらうことも可能です。
また、ブラウザの拡張機能を使うことで、YouTubeの動画を要約してもらうこともできます。
なお、添付するファイルやコピペした文章は万が一漏洩しても問題ないことを確認したうえで指示に含めるようにしましょう。
3. アイデア出し
3つ目はアイデア出しです。
学校や職場などでスピーチのテーマや新しい企画を考えなければいけなかったという経験は誰でもあるでしょう。
このときにもChatGPTが使えます。
ChatGPTにざっくりとしたテーマを与えたうえで「アイデアを提案して」と書くといくつかのアイデアを出してくれます。
例えば「これからバズりそうなスマホアプリを提案して」や「笑いが取れるスピーチのテーマを提案して」といった具合です。
このときに「10個考えて」など具体的な数字を指示すると1回の命令で複数のアイデアを提案してくれます。
なお、あまりにも多すぎると同じアイデアを繰り返すことがあるため、10個前後が目安です。
さらに、ここで出てきたアイデアを深堀りすることもできます。
具体的には提案してきたアイデアをコピペし、「〇〇(提案してきたアイデア)について具体的に内容を教えて」や「〇〇(提案してきたアイデア)の具体的なスピーチの原稿を提案して」といった具合です。
4. プログラミング
ChatGPTはプログラミングにも使うことができます。
対応しているプログラミング言語はJavaやC言語はもちろん、マイナーな言語まで一般的に使われている言語であれば基本的にすべて回答してもらえます。
開発時に必要となるフレームワークやライブラリまでも提案してもらえます。
また、自分がプログラミングをしていて、どうしても解決できない問題が出てくることもあるでしょう。
そんなときにはソースコードをコピペして「〇〇というエラーが出ます。修正してください」と命令することで問題を修正してもらうこともできます。
さらに、自分で書いたコードをコピペすることで、ソースコードの整理を行うリファクタリングの作業も行ってくれます。
一方で複雑なプログラムの場合は途中で生成が止まってしまったり、正常なソースコードでないこともあるため、注意が必要です。
特に自分が書いたコードから間違いを修正してもらう場合やリファクタリングを行う場合は、正常に動いていた部分が動かなくなる回答が出ることがあるため、元のコードのバックアップを取ったうえで行うようにしてください。
5. クリエイティブな文章生成
ChatGPTは文章生成が得意なことから、クリエイティブな文章生成を行うことも可能です。
例えばエッセイやストーリー、詩、記事などの創造的な文章を生成することができます。
最近では実際にChatGPTを使って書かれた書籍が発売されたり、ChatGPTを使ってニュース記事が書かれる事例もあります。
また、自分が考えたあらすじに沿って文章を作ってもらうこともできるため、自分が主人公のSF小説を作ってもらうことも可能です。
これまでは多くの費用がかかっていた文章作成もChatGPTを使えば無料でもできてしまうのです。
ChatGPTの注意点
ここではChatGPTを使う上での注意点について解説していきます。
ChatGPTを使うことで、様々な作業が効率化できるというメリットがありますが、注意点も多くあります。
中には重大な問題となることもあるため、しっかりと注意した上で有効活用していきましょう。
ここでは特に注意すべき3つの注意点に絞って解説します。
1. 誤情報の恐れ
1つ目は誤情報です。
ChatGPTは基本的には2023年頃までの情報しか持っていません。
そのため、新しい情報に関しては正しく回答されない可能性があるため、注意が必要です。
なお、現時点で最新のモデルであるGPT-4oではWeb上の情報を検索して回答してくれる機能が実装されています。
この機能を使うことで最新の情報も回答してくれますが、筆者が検証してみたところ精度はそれほど高くありません。
歴史など不変なものについては比較的ChatGPTの回答に信ぴょう性がありますが、最新の情報については注意が必要と言えます。
対策としてはネット検索と併用することが挙げられます。
2度手間にはなりますが、ChatGPTに回答してもらったあとにその情報が本当に合っているのか、自分でも再度Googleなどで検索することで、誤情報を信じてしまう可能性を下げることができます。
ちなみに最新の情報収集に関しては筆者個人的にはGoogle Geminiの方が優れている印象があります。
Google Geminiについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事Google Geminiは何がスゴイ?その特徴と活用方法などを解説
2. 情報漏洩の恐れ
2つ目は情報漏洩です。
とある会社ではChatGPTに入力した内容が別の人の質問に対する回答に反映されたとして、社内での使用を禁止しているところがあります。
このことから、ChatGPTに入力する内容は学習に使用されると考えて使用したほうが良いと考えられます。
また、ChatGPTを利用した質問や回答はChatGPTのサーバーに蓄積されています。
そのため、サーバーのセキュリティなどに問題があれば情報が漏洩する可能性もあります。
実際に一部のユーザーのチャット履歴が他の人のチャットに表示されてしまうトラブルが起きたことがあります。
対処法としては他の人に見られると問題となるような質問を行わないことが重要です。
例えばChatGPTの利用方法の1つとして、メールの本文を質問内容に含め、「このメールに対する返信を書いてください」と命令すればメールの返信を書いてもらうことができます。
しかし、先ほどのようなケースで命令文に含めたメールの本文が流出してしまう可能性があります。
この場合、メールの本文を直接書くのではなく、メールの概要を箇条書きで書いたり、メールに含まれる固有名詞(社名、人名など)を含めないようにすることで、ある程度は漏洩時のリスクを減らすことができます。
3. 著作権侵害の恐れ
3つ目は著作権侵害です。
この問題については多くのサイトで問題視されているため、既に知っている方も多いかもしれません。
ChatGPTはWebサイトなどの情報を元に学習されています。
そのため、ChatGPTが生成する文章は他のサイトの情報をそのままの形で回答する可能性があります。
対処法としてはコピペチェックツールを使用する方法があります。
コピペチェックツールとはツールに文章を貼り付けることで、自動的にWeb上に同じような文章が存在しないか検証してくれるツールです。
有名どころではCopyContentDetectorやこぴらんなどがあります。
この2つのツールは無料で利用できるため、著作権の侵害した文章でないか気になる場合は利用してみると良いでしょう。
なお、コピペチェックツールでも検出できない場合も考えるため、100%著作権侵害がないと判断しないように注意しましょう。
まとめ
今回はChatGPTの概要や歴史、使い方、注意点について解説しました。
途中でも書いたようにChatGPTは使い方次第で無限の可能性がある一方で注意点も多くあります。
今回紹介したような最低限の注意点を理解した上で使ってみてください!